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論文・著書情報


タイトル
和文:過熱水蒸気プラズマ装置の開発と殺菌処理への応用 
英文: 
著者
和文: 栗田理史, 大澤泰樹, 八井田朱音, 松村有里子, 岩澤篤郎, 沖野晃俊.  
英文: Masafumi Kurita, Taiki Osawa, Akane Yaida, Yuriko Matsumura, Atsuo Iwasawa, AKITOSHI OKINO.  
言語 Japanese 
掲載誌/書名
和文: 
英文: 
巻, 号, ページ        
出版年月 2025年9月25日 
出版者
和文: 
英文: 
会議名称
和文:日本防菌防黴学会第52回年次大会 
英文: 
開催地
和文:三重県志摩市阿児町神明718番地の3 
英文: 
アブストラクト 〔目的〕 大気圧低温プラズマは,さわれるほどの低温で放電損傷がなく,残留毒性も少ないことから,材料表面処理や殺菌など様々な分野で注目されている。プラズマによる表面処理や殺菌の効果は,プラズマ中に生成されるOHラジカルや過酸化水素などの反応性の高い活性種によるものである1)。活性種の生成にはプラズマ発生条件が強く影響し,特に供給ガス中の水分量が活性種の種類や濃度を左右する。我々のグループでは,プラズマに水蒸気を導入することによって,酸化電位の高いOHラジカルなどの活性酸素種が多く生成され,表面処理や殺菌の効果が向上することを明らかにしてきた2)。 そこで本研究では,水蒸気だけを用いるプラズマ装置を開発した。水蒸気は100℃で生成されるが,これをさらに加熱すると過熱水蒸気と呼ばれる状態になる。過熱水蒸気は通常の水蒸気より高い熱エネルギーを持つほか,酸素濃度が極めて低いため,酸化を抑えることができる。このため,過熱水蒸気は調理用のスチームオーブンレンジなどで使用されている。この過熱水蒸気をプラズマ化することで,低温という特徴は失われるものの,高い表面処理効果や殺菌効果が期待できる。さらに,水と電気だけを使用してプラズマを生成するのでガスボンベが不要になり,装置の可搬性や連続使用性が大幅に向上する。また,水以外の液体を利用して様々な効果を得る可能性も広がる。 〔方法〕 開発した装置ではまず,原料である精製水をペリスタポンプを用いて0.5~10 mL/minの流量で供給する。精製水は銅管製の流路を通過する過程で,160℃のリボンヒーターで加熱されて水蒸気となり,加熱を続けることで過熱水蒸気となる。過熱水蒸気はプラズマ発生部に導入され,電圧9 kV0-p,周波数16 kHzの交流高電圧を電極に印加してプラズマを生成した。このプラズマは筐体先端の直径1 mmの照射口から外部に押し出される。 殺菌実験では,10⁴-⁵ CFU/mLに調整したS. aureusの懸濁液を寒天培地上に滴下して乾燥させたサンプルに対し,プラズマを10 mm上方から10または30秒間照射した。照射後に培養を行い,殺菌範囲を観察することでプラズマの殺菌性能を評価した。 〔実験結果と新装置の開発〕 開発した水蒸気プラズマジェットの殺菌効果は,10秒間と30秒間の照射で,いずれの条件でも直径28 mmの範囲内の細菌が増殖せず,殺菌効果が確認できた。 装置の課題として,プラズマ照射口付近に水滴が付着しやすく,水の供給量に対して加熱が不十分であることが明らかとなった。そこで,照射口付近も十分に加熱できるようにプラズマ装置の構造を改良した。密着性の高いリング型ヒーターを使用して照射口付近の温度を120℃以上に維持することで水蒸気の凝縮を抑え,水滴の付着を防止する構造とした。発表では,改良した装置の設計および基礎特性の測定結果,殺菌実験の結果などについて報告する。 〔文献〕 1) T.R. Abonti et al., Dent. Mater. J., 35(4), 822–828 (2016). 2) H. Kawano et al., Biocontrol Sci., 23(4), 167–175 (2018).

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