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論文・著書情報


タイトル
和文:Brain-machine interfaceにおける手先速度デコーディングが偽的に高性能を示す可能性について 
英文:A possibility that hand position decoding in Brain-machine interface falsely shows high performance 
著者
和文: 古林捷, 深山理, 宮下英三.  
英文: Sho Furubayashi, Osamu Fukayama, Eizo Miyashita.  
言語 Japanese 
掲載誌/書名
和文: 
英文: 
巻, 号, ページ        
出版年月 2019年8月 
出版者
和文: 
英文: 
会議名称
和文:第13回 Motor Control 研究会 
英文: 
開催地
和文:東京 
英文:Tokyo 
アブストラクト 腕運動を再現するbrain-machine interface (BMI)において、従来、情報を復号するためのデコーダは「一次運動野の神経細胞活動に手先速度が符号化されている(Georgopoulos et al. 1983)」ことを前提として設計されてきた(手先モデル)。近年、このような神経細胞活動には、手先速度ではなく関節角速度と関節トルクが符号化されている(関節モデル)と考えたほうが推定精度が良いという指摘がされた(Miyashita et al. 2016)。本研究では、脳が関節モデルに基づき手先の運動を制御していると仮定した場合に、手先モデルにおいて一般的に用いられる手先位置速度カルマンフィルタデコーダ(以後手先KFデコーダ)がどのような挙動を示すのかについて数値実験により検討した。 まず、腕運動中の運動変数と複数の神経細胞活動の対からなるデータセットを、それぞれ手先モデルと関節モデルを満たすように作成した。手先を原点から直径0.1 mの円周を8等分した位置までほぼ直線軌道で移動する到達運動を想定し、神経細胞活動はビン幅1 msのバイナリとして扱い、Poisson processに従うnoiseを加えた。 次に、上記データセットに対して手先KFデコーダを作成し、運動中の手先位置を推定した。データセットとして作成した手先位置と手先KFデコーダにより推定された手先位置の誤差を解析することにより、神経細胞の活動が手先モデルに従うと仮定した場合と関節モデルに従うと仮定した場合とで、情報復号器としての手先KFデコーダの性能を評価した。 神経細胞の数が10の2乗のオーダー以上の場合には、手先モデル・関節モデルのいずれを想定しても手先KFデコーダは8方向の運動を精度よく推定することができた。ただし、関節モデルを推定する場合のほうが、手先位置の誤差がより大きくなる傾向がみられた。関節モデルを想定しても、手先KFデコーダが精度よく推定を行ったことは、デコーダの性能が良いからといって、そのデコーダの構造は必ずしも脳による手先運動制御を模しているとは言えないことを示唆している。また、関節モデルを想定して神経発火活動を生成した場合、デコーダと同じく手先モデルを想定した神経発火活動を生成する場合に比べ、同程度の推定性能を得るために多くの神経細胞から活動をサンプルすることが有用であった。このことも、脳による手先運動制御とは構造の異なるモデルを採用した場合であっても、十分に多くの神経細胞を観測することで見かけ上の性能が改善されてしまう可能性を示している。

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