Home >

news ヘルプ

論文・著書情報


タイトル
和文:建築物における COVID-19 期間中の換気行動 
英文: 
著者
和文: 海塩渉.  
英文: Wataru Umishio.  
言語 Japanese 
掲載誌/書名
和文: 
英文: 
巻, 号, ページ        
出版年月 2022年9月 
出版者
和文: 
英文: 
会議名称
和文:日本防菌防黴学会第 49 回年次大会 
英文: 
開催地
和文:東京 
英文: 
アブストラクト 〔目的〕 2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行に伴い、オフィスに大きな変化が生じた。感染経路(接触感染、飛沫感染、空気感染)に応じた種々の対策が講じられ、空気感染対策として建物の換気・空調に注目が集まっている。「換気の悪い密閉空間」を回避するための窓開けによる自然換気や空調設備による機械換気量の増加等は、一般に省エネの観点から不利側となる対策が多い。省エネは建築分野の重要課題と位置づけられていることから、長期化するWith COVID-19の中では、換気・空調により室内環境を良好に保つことは勿論、省エネも視野に入れる必要がある。そこで本稿はWith COVID-19の換気行動とエネルギー消費量の関連を検証し、適切な換気・空調方法についての示唆を得ることを目的とする。 〔方法〕 COVID-19流行中の2020年11, 12月の2週間、18企業22オフィスに対してアンケート、オフィス環境実測、一部ビルに対してBEMS等データ収集を実施した。アンケートは執務者と管理者用の2種類用意した。執務者に対してはBefore/With COVID-19の働き方の変化や感染対策を、管理者に対しては換気・空調方式、その維持管理や感染対策について質問した。オフィス環境実測として温湿度、CO2濃度、PM2.5質量濃度を測定した。測定箇所は代表者席の机上とした。実測中には1時間ごとの窓の開閉状況、在室人数の記入を依頼した。Before COVID-19(2019年)とWith COVID-19(2020年)のエネルギー消費量を比較するため、BEMS等が導入されている4ビルに対して当該期間の電力消費量のデータ収集を行った。 〔結果〕 接触感染対策としてのアルコール消毒液の設置は全ビルで実施されており、飛沫感染対策としてはパーティション等による物理的離隔の確保やレイアウトの工夫の実施率が高かった。空気感染対策としての窓開けや換気量の増加は、約半数のビルで実施されていた。その効果もあり、環境実測においてCO2が1000ppmを上回るビルは1つのみであり、多くのビルで感染対策としての換気の効果が認められた。オフィス勤務日数が平均1日/週減少し、在席率が35%に抑えられていたこともCO2濃度が低かった一因と考えられる。4ビルの2019年と2020年の電力消費量を季節別に比較すると冬の増加が顕著であり、2020年12月は全ビルで前年比+50%以上となった。これは、外気量の増加に伴う空調負荷の増大が原因と考えられる。より詳細なデータが得られた1ビルについて時刻別に見てみると、夏の空調用電力のピークが昼から朝にシフトし、冬の朝のピーク値は約2倍に膨れ上がっていた。従って、感染対応を考慮する場合、換気の方法についてきちんと定義した上で空調設備の負荷計算や機器容量の決定を行う必要があると言える。同時に、本調査では中高性能フィルターを空調に備えた建物で飛沫核と粒径範囲が近しいPM2.5濃度が低かったことから、過剰に外気量を増やさず空調設備や空気清浄機による循環(相当換気量)を考慮することも必要と考えられる。

©2007 Tokyo Institute of Technology All rights reserved.